大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

釧路地方裁判所 昭和47年(わ)203号 判決 1973年9月19日

本籍

山口県宇部市大字小串一八四番地の一

住居

北海道網走市南二条東二丁目三番地

医師

石丸岳

昭和五年三月一三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官岸肇出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月及び罰金七〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役引の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、網走市南二条東二丁目三番地において、整形外科医院を経営しているものであるが、不正の行為により所得税を免れようと企て、

第一、昭和四四年中における総所得金額は三、一九三万七、三三九円で、これに対する所得税額は一、四七三万一、二〇〇円であるのにかかわらず、収入の一部を除外して公表経理上架空経費を計上するなどの行為により所得を秘匿したうえ、昭和四五年三月一六日網走市南六条東五丁目九番地所在の網走税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は一、六二八万二、六二七円であつて、これに対する所得税額は五五〇万三、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額と申告税額との差額九二二万七、八〇〇円について、法定の納付期限までに納付せず

第二、昭和四五年中における総所得金額七、〇一二万八、九二五円で、これに対する所得税額は三、八五五万六、七〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四六年三月一五日前記網走税務署において、同税務署長に対し、総所得金額は二、五三〇万七、五六二円であつて、これに対する所得税額は九三八万八、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額と申告税額との差額二、九一六万七、九〇〇円について法定の納付期限までに納付せず

もつて、それぞれ不正の行為により右各差額と同額の所得税を免れたものである。

(証拠)

判示全事実につき

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一、被告人作成の上申書三通

一、被告人の検察官に対する供述調書三通

一、金沢旭、大丸文男(一〇通)、坂本一光(二通)、阿部捷子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、大丸文男(二通)、坂本一光、阿部捷子、石丸嬉子の検察官に対する各供述調書

一、大丸文男作成の昭和四七年一月一九日付、同月二〇日付、二月二日付、同月一八日付上申書

一、大橋広作成の証明書

一、阿部正彦外七名作成の調査事績報告書

一、森三雄外一名作成の調査事績報告書

一、押収の青色申告者書類つづり一綴(昭和四八年押第三号の1)、入院料交公貸布団入金台帳一冊(同号の4)、交通事故請求控二綴(同号の10、11)卓上日誌二綴(同号の25、26)、当直日誌三冊(同号の27乃至29)、事務日誌三冊(同号の30乃至32)、ノート三冊(同号の35、64、65)、再来患者台帳一二冊(同号の36乃至39、43乃至50)

判示第一の事実につき

一、加藤健次郎(昭和四七年三月二二日付)、栗村敏(同月七日付)作成の各証明書

一、時田博昭、大前一男作成の各答申書

一、押収の仕訳伝票綴一綴(同号の40)、元帳一冊(同号の41)、再来患者台帳一〇冊(同号の51乃至60)、ノート六冊(同号の66、67、74乃至76、79)、当直日誌三冊(同号の68、69、78)、事務日誌四冊(同号の70乃至73)、国保入院請求台帳(同号の77)

判示第二の事実

一、大丸文男作成の昭和四七年五月一九日付上申書

一、片柳鉄夫作成の自賠責保険治療費支払調査報告の件と題する書面

一、日動火災海上保険(株)札幌支店作成の自動車損害賠償責任係険契約に基づいて支払された治療費調査回答と題する書面

一、吉沢利次作成の石丸医院の医療費支払に関する回答の件と題する書面

一、川村忠男作成の自賠責任保険に関する石丸医院に対する治療費支払の調査について(回答)と題する書面

一、東京海上火災保険(株)作成の自賠費支払保険金調査(回答)と題する書面

一、楢崎友孝作成の自賠責契約に基づき支払された治療費に対する調査方依頼の回答についてと題する書面

一、旭川地方貯金局長作成の郵便貯金の証明についてと題する書面

一、富国生命保険相互会社料金部地方集金課作成の石丸岳既払保険料証明についてと題する書面

一、玉尾孝介、副田政清、原田勲、大橋広、藤岡次男、佐々木朝司郎、加藤健次郎(昭和四七年三月二二日付)、栗村敏(同月七日付)、増田一朗作成の各証明書

一、山崎浩作成の答申書

一、太田信作成のパーソナル・チエツク(写)

一、美馬幸夫外六名作成の調査事績報告書

一、松野和雄作成の調査事績報告書

一、押収の決算書確定申告書綴一綴(同号の2)、卓上日誌(同号の3)、ノート(入院料)(同号の5)、自賠責請求控四綴(同号の6乃至9)、仕訳伝票一三綴(同号の12乃至24)、国保入院請求簿(同号の33)、

社保入院請求簿(同号の34)、入院料入金台帳(同号の42)、ノート(当直)三冊(同号の61乃至63)

(適条)

判示第一、第二の各所為は所得税法二三八条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一、第二の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役六月及び罰金七〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、同法二五条一項により本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 一之瀬健 裁判官 小杉丈夫 裁判官今井理基夫は出張につき署名押印することができない。裁判長裁判官 一之瀬健)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例